Mのページ

【ハイロ代表マエダシゲル】による映画エッセイ

 

というわけで唐突にはじまります、『Mのページ』

ハイロ代表のマエダ・シゲルが観た映画の感想や批評のコーナーです。

タイトルはタケヒロ雄太さんが名付け親です。

『M』っていろいろイメージを連想させるアルファベットです。昭和元年(1925)から平成元年(1988)に日本で公開された映画は『新生意気坐』に掲載、その他の映画のことを書いてゆきます。どうしてゆくかは更新しながら考えて行くことにします。よろしくお願いいたします。

 


 

 

 

2020年8月19日更新

 

 

灼熱の日本の夏、コロナ禍も終息する気配もなし。映画館はソーシャルディスタンス、場内換気消毒を徹底させて営業を再開させました。気づけばもう8月も半分を過ぎました。2020年上半期(1月~7月)の〇×式の「みたぞ!!リスト」から始めます。ぽつぽつと気になる作品の感想批評をと書いてゆきたいと思います。

 

 

●1月(25本映画館)

「カツベン」××、「スターウォーズ・スカイウォーカーの夜明け」△、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」〇、「ルパン三世 THEファースト」×、「燃えよスーリア」〇、「男はつらいよ お帰り寅さん」△、「フォードVSフェラーリ」△、「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローライジング」×、「アナと雪の女王2」〇、「屍人莊の殺人」△、「カイジ ファイナルゲーム」××、「リチャード・ジュエル」◎、「ペットセメタリー」×、「ジョジョ・ラビット」〇、「パラサイト 半地下の家族」◎、「ラストレター」△、「スターウォーズ・スカイウォーカーの夜明け」△、「キャッツ」×、「メイドインアビス・深き魂の黎明」◎、「記憶屋」×、「パラサイト 半地下の家族」◎、「ジョジョ・ラビット」〇、「ロングショット」〇、「ドン・キホーテ(テリー・ギリアム)」〇、「ナイブス・アウト」〇

 

●2月(10本映画館)

「ハスラーズ」×、「大脱走」〇、「犬鳴村」××、「影離」××、「ヲタクに恋は難しい」××、「スキャンダル」×、「七人の侍」〇、「ミッドサマー」〇、「チャーリーズエンジェル」◎、「1917」◎

 

●3月(13本)

「SHIROBAKU」△、「初恋」×、「チャーリーズエンジェル」◎、「ピクニック」(ジャン・ルノアール)◎、「かくも長き不在」〇、「Fukushima 50」△、「ジュディ 虹の彼方に」△、「白ばんば」◎、「三島由紀夫vs東大全共闘」〇、「ハーレイクイン華麗なる覚醒」〇、「野生の呼び声」〇、「ハーレイクイン華麗なる覚醒」◎、「一度死んでみた」×(⇐27日までだったか、この辺りからコロナ禍の緊急事態宣言のため映画館自主休業)

 

●4月 以下DVD

「ドライバー(ウォールター・ヒル)」〇、「銀河ヒッチハイクガイド」△、「スチームボーイ」△、「群盗」△、「アジョン」△、「ヤング・フランケンシュタイン」△、「裏切りのサーカス」×、「ソウル・ステーション/パンデミック」〇、「新 感染」〇、「クボ 二本弦の秘密」◎、「悪女」△、「イーオン・フラックス」×、「ベルフラワー」×、「モンスター(シャリーズ・セロン)」〇、「パプリカ」△、「不思議惑星キン・ザ・ザ」〇、「アイ・フランケンシュタイン」×、「湖のランスロ」◎、「ドラキュラ(ダリオ・アルジェント)」◎、「続・夕陽のガンマン」◎、「スーパー」〇、「私が生きる肌」〇、「マインド・ゲーム(湯浅政明)」〇

 

●5月 以下DVD

「バットマンvsスーパーマン」〇、「ジャスティスリーグ」〇、「ドニーダーコ」〇、「ブレンダとケルズの秘密」〇、「深夜の告白」◎、「エヴァンゲリオンQ」×、「キャビンフィーバー」×、「ホステル」×、「ノックノック」△、「ヘルイレイザー」〇、「片腕マシンガンガール」〇、「メアリーの総て」×

 

●6月(12本ここから映画館)

(5日から新文芸坐開業初日初回に駆け込む⇒)「蜘蛛女のキス」〇、「タッカー」△、「終電車」△、「日曜日が待ち遠しい」◎、「ディリリとパリの時間旅行」〇、「ロング・ウェイ・パス」〇、「心霊喫茶エクストラの秘密」×、「さびしんぼう」〇、「野ゆき山ゆき海べゆき」〇、「ゾンビ」◎、「死霊のえじき」×、「デット・ドント・ダイ」〇

7月(13本)

「テルアビブ・オン・ファイヤー」△、「ロングショット」△、「ホーンテッド世界一怖いお化け屋敷」××、「ビヨンド4オンライン上映会」〇、「もののけ姫」△、「HOUSE」◎、「ねらわれた学園」×、「時をかける少女」〇、「わが闘争」〇、「青春デンデケデケデケ」〇、「透明人間」×、「サハラ戦車隊」〇、「自由への戦い」◎、「ドイツ零年」◎

 

 

 


 

 

 

2020年8月13日更新

 

 

久々の掲載です。今回は2020年8月にハイロ・フリースペース&ハイロ・フリートーク オンライン イン APIA40で上映した10作品中8作品の感想批評です。

 

 

「憑影」

傑作。歩いて来る、振り返るというアクションを繰り返す。作者本人が言う通り同じカットはない。考えうるネタが矢継ぎ早に襲いかかり練られた構成が本来見えていることでしか語りえない実験映画と呼ばれてしまいがちな映画にドラマを生んでいる、その奇跡に唖然とする。平面的な印象に陥りがちな映画に奥行きを与える画面内のアクションは「市民ケーン」のパンフォーカスにも匹敵する事件だと思う。もっと騒がれてしかるべき傑作。 

 

「ストレンジな愛を」 

鳥籠というシチュエーション、女が男の手にそっと手を添える。立派な書棚に囲われた部屋の一室でカップラーメンを啜る場違いな振る舞いの妙。ただそんな瞬間を切り取って見せられるだけで映画の至福、どれだけのカットを積み重ねても、この一瞬の仕草を切り取り見せることこそ饒舌に勝る映画の魅力なんだと思ってしまう。故にファーストショットで女が歩いて登場するショットのていたらく。トリフォーの「日曜日が待ち遠しい」とは言わぬまでも。

 

「うつせみ」

映画はシナリオではない。カメラに出ている役者に魅力が今一ならやっぱり脚本に期待してしまうが。物語は目に見えない。目に見える映像は決して物語ではない。物語らせようという作者の作為の賜物だ。見えているものと次の繋がりが、目で追うことの関係や写真の中の動くちょっとした仕草が「読み」を孕み生む。

目には見えないが、その読みの連鎖が物語をドラマを想像させた時映画は物語るのではないだろうか。 

 

「愛 against  i」

調子をはずした楽器の演奏を聴いている不快感が、だんだん快感へと変調されていく怪作。作者本人が意識してやっていたら本気で凄いが多分違う。

 

「オレの古女房」

デジタルはモノではない。だから手で触れない。しかし宙崎抽太郎の作品には手触りがある。一日とういか一気呵成に撮り上げたであろう故に生まれたリズム、「雨、人形、洗濯機」というシュールな三者の出会いがリリカルな詩を歌い上げている。そして何よりも素晴らしいのは映画は独りでも作れます、それもエンターテインメントであるという点である。

 

「Ascension Dream」

鉄柵~てんとう虫…飛行機の窓からの草。作者の柔らかい一面を垣間見せる数ショットからなる叙情的短歌。

 

「BUS」

山、水面、バスの光跡。見えたものを見えたものとして提示し構築してゆく作者の素直さが垣間見える。がそれ以上に映画が作者を裏切ってゆかない限界の歯痒さがある。

 

「しとしとプレドニゾロン夢」

フレアー、梢、ラストショットを失念。数ショットを積み重ねて心情を語ろうとするが、作者の撮った映像は作者の過剰な思い入れ思い込みを反映してはいない。そこで起こる作者、作品、観客の「読み」の齟齬が映画は見たら見た人のものと言われ納得しつつ、映画の解釈についてつい考えさせらる。

 

マエダ

 

 

 


 

 

 

 

 

2018年8月7日更新

 

『アトミック・ブロンド』(2017年)   

東宝シネマズ南大沢2017 10/22  11/9 

監督/デビット・リーチ・撮影/ジョナサン・セラ

編集/エリザベート・ロナルズ 115分 米

出演/シャリーズ・セロン ジェームズ・マカヴォイ ジョン

   グッドマン ソフィア・ブテラ エディー・マーサン他

 

アクション映画。小津映画の画面内と編集による映画の運動のアクションでなく、殺陣のアクション。

 

敢えてこの時代に殺陣に拘る、その姿勢、志が嬉しい。シャリーズ・セロン40歳もそこに惚れてか製作まで買ってでた。その心意気。監督曰く『ガン・フー』。ガンアクションとカンフーを下敷きに米風味にアレンジした殺陣が見どころ。いやあ~殺す殺す。『キック・アス』のヒットガールちゃんの時もビックリしたけど。『ジョン・ウィック2』では複数の殺し屋との闘い、それをカットバックで見せるシークエンスがあって、おのおのの持っていたであろう迫力がそがれてガッカリしたけれど、今回の作品では直球勝負。MI6の女エージェントを演じるシャリーズ・セロンが本気で体を張って実にいい。プラチナブロンドの髪を振り乱し満身創痍の傷や痣を隠さないヌードショットが美しい。背中から狙う肩甲骨のバストショット。もはやアクションはモリモリ筋肉にあらず。肩甲骨の柔軟性にあり。時代設定となるベルリンの壁崩壊が迫った1989年の秋。同時代、スタローンやシュワルツェネッガーの台頭の系譜を思うと肩甲骨の主張は挑戦的だ。物語の構成はシンプル。事情聴取と回想のカットバック。焼き鳥で例えると『ネギ間』の構造かな。その場面転換にOLとワイプを使い趣向を凝らしてテンポをつける。回想のベルリンのくだりも、ウイスキーからウヲッカ、冷たい河から氷風呂と類似系のマッチカットが目立つ。シャリーズ・セロンのアオリ多様のカットはMへ誘うためのスブリミナル効果。そしてまさかのソフィア・ブテラ、『キングスマン』の両足サーベルお姉ちゃん、『マミー/呪われた砂漠の王女』の女ミイラちゃんと、『修羅雪姫かよ!』とツッコミたくなるようなレズシーン。「あたいホントはこの仕事怖いんだ」なんて本音言われると隠し合いだまし合いの気の張った世界で思わずキュンときてしまう、説明なしの感情移入、うまい。しかし何と言ってもこの映画の最大の見どころは、救出中のスパイグラスが撃たれて安全確保のために敵の潜むアパートに入って乱闘の上、二台目の敵の車を振り切るまでの10分弱に及ぶワンシーンワンカットのガンフーアクション、カーアクション。(そういえば、全編140分ワンカット、『ヴィクトリア』という映画もあった。こちらも舞台がベルリンでした。)そしてアクションと同時進行するワンカットの撮影現場で、どうやっているのだろう、その刹那の傷や痣の特殊メーキャップの技に唸ってしまう。役者たち、まずジェームズ・マカヴォイのノリがいい。ジョン・グッドマンが老獪な役を余裕たっぷり演じている。上司役のトビー・ジョーンズの顔がいい。最後『ベルリンの壁を崩壊に導いたのは私よ』と本当?嘯く?その荒唐無稽さ。殺伐としている感はぬぐいされないけれど、カタルシスです。余計なことだけど、ベルリンの駒落としの風景カット、クラブに入る時の駒落としのカットは無くても十分スタイリッシュ。

(マエダシゲル)